2000年度の歳入・歳出総額を見ると、門真市が457億円・448億円、守口市500億円・490億円となっており、財政規模もよく似ています(図表3-2)。標準的な税収に道路譲与税などと普通地方交付税をプラスした「標準財政規模」で見ると、門真市が267億円、守口市が318億円で、守口市の方がやや大きくなっています。
実質収支比率(実質収支の標準財政規模に対する比率)は、どちらも3.0%の黒字であり、同じような財政状況だといえます。ただし、実質単年度収支を見ると、門真市が1億9,500万円の赤字、守口市は12億3,100万円の黒字となっています。これは、門真市の場合、積立金の取崩しなどで単年度の赤字をカバーしていることを表しています。
財政の硬直度を示す経常収支比率は、門真市が101.9、守口市が101.4と、どちらも100を超えており、きわめてきびしい状況にあります。大阪府下の衛星都市の経常収支比率はきわめて悪く、100をこえる都市が32市のうち10市もあります。門真・守口市はその10市のうちに入っているわけです。10年前の1990(平成2)年度の経常収支比率は、門真市が73.8、守口市が92.9でしたから、門真市の財政状況の悪化がこの間急速に進んだといえます。
3.地方債と積立金の状況
図表3-3に示されるように、門真市の地方債残高は392億円、守口市の残高は502億円で、守口市の方が多くの借金をかかえていることになります。これを人口1人当たりにすると、門真市で290,821円、守口市で332,854円となります。大阪府下の人口1人当たり地方債残高の平均が296,258円ですから、門真市は府下平均並み、守口市は平均をかなり上回っています。
積立金残高を見ると、門真市が143億円、守口市が41億円であり、守口市がかなり少なくなっています。とくに、財政調整基金は門真市が41億円に対して、守口市は8億円程度とわずかしかありません。人口1人当たりの財政調整基金の現在高を見ると、門真市が府下7位に対して、守口市は23位と下位クラスとなっています。ただし、門真市の積立金残高は、1991年度には204億円ありましたが、現在は143億円にまで下がっており、取崩しが進んでいます。
地方債残高に債務負担行為をふくめた借金残高から積立金残高を差し引いた「将来の実質的財政負担」を比較すると、門真市が391億円、守口市が568億円であり、守口市の方が180億円近く多くなっています。
地方債の元利償還費が標準財政規模に占める比率を示す公債費比率は、門真市が11.6に対して、守口市は16.7と高くなっています。公債費比率の大阪府下都市の平均が14.0ですから、門真市は平均以下ですが、守口市は平均以上となっています。ただし、門真市の公債費比率は、1990年度の7.5から2000年度には11.6へと徐々に高まっています。
4.歳入構造と地方税収の比較
図表3-4で歳入構造を見ると、地方税の割合は、門真市の49.2%に対して守口市が53.7%であり、守口市の方がやや高くなっています。地方交付税も門真市39億円に対して守口市が57億円と多くなっています。国庫支出金は、逆に門真市の方が大きくなっています。特徴的なことは、分担金・負担金と使用料・手数料の比重が、いずれも守口市の方が大きくなっていることです。
地方債については、守口市が15億円程度に抑制しているのに対して、門真市は30億円程度で、やや多くなっています。
門真市の場合、1990年度の地方税の歳入全体に占める比率は56.5%でしたから、この10年間にかなり低下したことになります。それは、図表3-5に示されるように法人住民税の大幅な落ち込みによって、地方税収が減少したことによります。
門真市の地方税収入は1990年度にくらべて2000年度には6.9%のマイナスとなりました。それは、個人住民税の所得割が18.1%の減少、法人住民税の法人税割が63.2%も減少したことによります。固定資産税が39.4%の増加となったため、地方税収入の減少は6.9%にとどまりましたが、法人住民税の大幅な減少は深刻な問題です。門真市職員労働組合行財政研究会編『しのびよる財政危機−転換期の門真市財政の現状と課題』(2000年11月)が明らかにしているように、このような法人住民税の落ち込みは、大部分が松下電器関連企業の税収の落ち込みによるものでした。松下グループからの税収が今後どれくらい回復するかは予測がつかず、松下依存型の税収構造から脱却して、地域経済の自立的発展をめざした政策をうちだすことが重要となっています。
守口市の場合は、この10年間の変化を見ると、わずかながら地方税収はプラスとなっています。個人住民税の所得割の減少が15.5%減と門真市よりも小さかったこと、法人税割の減少も32.8%と、減少率にして門真市の半分程度にとどまっていることによります。
5.歳出構造の比較
図表3-6で、性質別歳出構造を見ると、まず人件費の比重は、門真市の29.4%に対して守口市が32.9%であり、守口市の方がやや高くなっています。両市とも職員の平均年齢が高く、人口1人当たりの人件費を見ると、門真市が97,606円で府下で5番目に高く、守口市は106,982円で府下で最も高くなっています。
両市に特徴的なことは、扶助費の比重が高いことです。門真市は18.2%、守口市は20.5%となっています。人口1人当たりの扶助費は、守口市が66,790円で府下で最も高く、門真市が60,294円で3番目に大きくなっています。
投資的経費(普通建設事業費)は、門真市が15.4%、守口市が5.3%であり、守口市の方がかなり低くなっています。これは2000年度の単年度の数値です。過去の普通建設事業の状況を人口1人当たりの数値で見ると、1989年度から93年度の5年間では、門真市が265,786円、守口市が277,660円であり、府下23位と20位と下位に属していました。1994年度から1998年度の5年間で見ても、門真市251,044円(20位)、守口市165,724円(31位)であり、両市の公共投資は大阪府下では少ない方となっています。
目的別歳出構造を人口1人当たりの金額で比較すると(図表3-7)、門真市・守口市が非常に似かよった歳出構造となっていることがわかります。門真市では、総務費と衛生費がやや大きくなっていること、守口市では教育費と公債費が比較的多いことが目立ちます。
6.合併特例債について
「合併特例法」の1999年の改正で、あらたに「合併特例債」の制度が設けられました。これは、2005(平成17)年3月末までに合併した市町村に対して、合併後10年間、合併にともなう公共施設の整備・統合等の事業を進めるために、事業費の95%までの起債充当を認め、その元利償還の70%を普通地方交付税の基準財政需要額に組み入れて措置するというものです。その他に、旧市町村の振興のためのイベント等に対する一定規模の基金について、同様に95%の起債充当を認め、元利償還の70%を交付税措置するという制度もつくられました。この合併特例債が、財政難の中で公共事業を進めようと考えている自治体を合併へと誘導する有力な手段となっています。
門真市・守口市の「合併」の場合、図表3-8に示されるように、標準全体事業費402.6億円、合併市町村基金の上限40億円、10年間で合計442.6億円が認められることになります。現在の両市の公共投資額合計額が94.9億円ですから、合併特例債をフルに活用するとすれば、各年度ごとに約5割増しの公共事業ができることになります。大規模開発を進めようとする立場からすれば、魅力的な制度といえるかもしれません。
しかし、合併特例債はあくまでも地方債の特例であって「借金」が増えることに変わりはありません。その元利償還の7割が交付税措置されるとはいえ、残りの3割は市の自主財源の負担となります。また、現在地方交付税制度そのものが破綻寸前の状況にあり、基準財政需要額の削減をふくむなんらかの改革がせまられています。合併特例債の元利償還部分の基準財政需要額が増えるとしても、その他の経費にかかわる基準財政需要額が削減されていくことが十分予想されます。そうなると、予想通り地方交付税が入ってくるとは限りません。1990年代の地方債とその元利償還の一部を地方交付税措置する制度を活用した単独事業の拡大が、多くの自治体を財政危機に追い込んだように、合併特例債によるハコ物事業の拡大が、合併自治体の財政破綻をまねかないとも限らないのです。合併特例債をあてこんで不必要な公共事業に手をだすようなことだけは避けるべきでしょう。