4 産業・経済




1.産 業

 まず、門真市・守口市の産業構造を検討してみましょう。門真市には松下電器産業Mや松下電工M、松下電子部品Mが、守口市には三洋電機、松下電池工業など、大手家電メーカーが立地しており、両市はいわば「家電の企業城下町」のイメージがあります。

(1)産業構造

 門真市の産業構造は、「事業所統計」によれば、事業所数・従業者数ともに、卸売・小売・飲食店業、製造業、サービス業のウェイトが高いといえます(以下、 表4-1を参照)。とくに、雇用(従業者数)では、製造業が最も多くなっています(約40%)。
 これに対し、守口市の産業構造は、門真市と同様、事業所数、従業者数ともに、卸売・小売・飲食店業、製造業、サービス業の割合が高いといえます。
門真市と守口市の産業構造はよく似ているといえますが、異なる点もあり、たとえば、門真市では1991年をピークに、事業所数・従業者数ともに減少していますが、守口市では事業所が431減少したにもかかわらず、従業者数は9,749も増加しています。

(2)工業

 それでは、次に、門真市・守口市の両市で産業構造上ウェイトの高い「工業(製造業)」について詳しくみてみましょう。図表4-2は、門真市の工業を産業中分類別にみたものです。最も目を引くのが電気機械器具製造業で、工場数は決して多くありませんが、従業員数で約40%、製造品出荷額等総額で50%〜60%も占めています。
 その他、金属製品製造業、一般機械器具製造業、プラスチック製品製造業が中心的な業種として挙げられます。
 それでは、守口市工業の特徴をみてみましょう(図表4-2)。工場数は門真市のちょうど2倍程度の2,000で、割合からいうと、高い方から、一般機械器具製造業、衣服・その他の繊維製品、金属製品製造業、プラスチック製品製造業となっています。だいたい門真市と同じような構成ですが、守口市の方が衣服・その他の繊維製品の占める割合が高くなっています。
また、門真市の従業者数は約3万人ですが、守口市は1万5千人から2万人と、従業者数では、門真市よりも守口市の方が少ないことがわかります。構成をみると、電気機械器具製造業が最も多く約30%、ついで一般機械器具製造業、金属製品製造業、衣服・その他の繊維製品、出版・印刷・同関連業、プラスチック製品製造業となっています。製造品出荷額等総額をみると、電気機械器具製造業が最も高く約45〜50%を占めています。
 図表4-3は、門真市の工場数を規模別にみたものです。これをみると、門真市、守口市ともに1〜9人規模の工場が多いことがわかります。1〜9人規模の工場が、門真市は795(73.2%)、守口市は1,736(85.1%)であり、守口市の方がより小さい工場が多いといえます。また、守口市は、1〜9人規模の工場で働く従業者数が、全体の35.0%を占めるほど多いことがわかります。
 また、1985年から95年の10年間の推移をみると、門真市では124の事業所と約2,000人の従業者、つまり事業所・従業者の大体1割が減少したことがわかります。これに対し、守口市では217の事業所、約5,000人もの従業者が減少しています。また、門真市よりも守口市の方が、より規模の小さい事業所での減少が目立っています。

(3)商業

 それでは、続いて商業について検討してみましょう。商業については、まず、卸売業、小売業を含めた全商業活動を、次いで小売業に限定して検討していきます。

1)商業の特徴

 ここでは、商店数、従業者数、販売額、売場面積の指標を用いて、門真市・守口市商業の21年間の推移を比較検討してみましょう(図表4-4参照)。
・商店数
 商店数は、守口市が1979(昭和54)年、門真市が1982(昭和57)年をピークに減少を続けています。1979(昭和54)年から1999(平成11)年までに、商店の減少数は、守口市913、門真市599と著しく減少しています。特にピーク時の1979年を水準として97年を比較すると、商店数の減少率は、守口市28.3%、門真市19.3%となっています。
・従業者数
 従業者数は、門真・守口市ともに減少傾向にあります。従業者数の減少傾向は、守口市が1994−97年、門真市が1991−94年に始まっています。特に門真市の減少幅が大きく、1991(平成3)年から1997(平成9)年までに1,180人の減少がみられます。これに対し、守口市では、1994年から1997年まで550人と半数程度です。このことは、小零細企業の廃業が影響しているのでないかと推測されます。
・販売額
 販売額は、1976(昭和51)年から1985(昭和60)年まで、門真・守口市ともに発展してきましたが、1985(昭和60)年以降、異なる動向がみられます。守口市では、1985年から1988(昭和63)年まで急落、1991(平成3)年に再び上昇、1994(平成4)年に下落、1997(平成9)年に微増となっており、守口市の販売額はピーク時(1985年)まで回復していません。
門真市は、1991年までは順調に発展しましたが、1991年を水準として94年に39.8%も下落しています。その後、1997年に再び販売額が上昇していますが、守口市と同様にピーク時まで回復していません。
・売場面積
 門真・守口市の売場面積は、1976(昭和51)年から拡大傾向にあります。売場面積の著しい拡大がみられた門真市は、1976(昭和51)年と比較すると172%、守口市では148%となっており、守口市よりも拡大しています。このことから、門真市では、店舗の大型化が進展したといえるでしょう。
以上の指標から、門真市の商業は、商店数の大幅な減少にも関わらず、従業者数の増加、売場面積の拡大を遂げており、より大型化しているといえます。

2)企業規模別の商店数、販売額

・商店数、従業者数の変化
 次に、門真・守口両市の1982(昭和57)年から1997(平成9)年までの、商店の会社形態、業種別、企業規模別の増減数を検討してみましょう(図表4-5参照)。商店総数は、守口市891、門真市599と大幅な減少しています。会社形態からみると、門真・守口市ともに、法人化が進展しています。また、業種別にみれば、門真・守口市ともに、卸売業よりも小売業の大幅な減少がみられますが、守口市は、卸売業、小売業ともに、門真市よりも減少しています。従業員規模別にみると、最も減少しているのは1〜2人規模で、守口市では782、門真市では626減少しています。
 図表4-6は、1997(平成9)年の従業員規模別商店数をみたものです。これをみると、門真・守口市ともに1〜9人規模の比重が高いことがわかります(守口市88.9%、門真市88.6%)。次に、販売額をみると、総販売額に占める50人以上の商店の占める販売額が、守口市86.7%、門真市21.3%、1〜9人商店の販売額が守口市11.6%、門真市32.9%となっており、守口市の方が、販売額が大型店舗に集中する傾向にあるといえます。

3)小売業の特徴

 今度は、小売業に絞って検討してみましょう。小売業とは、個人用または家庭用消費のために商品を販売する事業所を指します。ここでは、小売業の業種別販売額、小売業に従業する商店の規模別販売額、年間当たりの1商店の販売額、年間従業者1人当たりの販売額から検討してみましょう(図表4-7参照)。用いる資料は、2001年度の『大阪の商業』です。なお、業種別販売額の統計は、「X」が調査のための秘匿されているために詳細がわかりません。
業種別販売額からみると、門真市では織物・衣服・身の回り品小売業、飲食料品業が、守口市では自動車・自転車販売業、家具・什器・家庭用器具販売業の比重が高いといえます。
 1店当たりの年間販売額は、守口市よりも門真市が上回っていますが、従業者1人当たりの年間販売額は、守口市の方が上回っています。このことは、より守口市の方が効率的な販売を行っていることを意味します。

4)商店街の現状と問題点

・商業施設の数と立地状況
 ここでは、門真市の具体的な商業施設の状況をみてみましょう。門真市の商店街、大型・中規模店は、そのほとんどが門真市北部と東南部(大阪府門真団地周辺)に集中して立地しています。
 うち商店街は、京阪沿線沿いを中心に、約20あります。大型店は、ライフ、イズミヤ、ダイエー、コーナンなどの第1種店舗が約10、いろいろなストアーなどの第2種店舗が約20、合計約30店舗あります。中規模小売店は、ユニクロ、キリン堂、エルなど約30店舗程度があります。これら大型店・中規模小売店は、京阪沿線や国道163号線沿いを中心に立地しています。
・商店街の現状と問題点
 さて、最近、商店街が元気ないとか、シャッターを降ろしている店が多いという話をよく聞きます。門真市の商店街ではどうなのでしょうか。守口門真商工会議所が、2000(平成12)年に実施した「中小小売商業経営者動向実態調査」によれば、・門真市・守口市商店街の売上高は不況のため大幅に減少している、・商店街の抱える問題点としては、空き店舗問題、大型店との競合激化、店舗施設の老朽化、店主の意欲減退等が挙げられる、という結果が出ています。
 この中で、空き店舗問題について、空き店舗が慢性的に多数存在する割合は門真市が19%、守口市が28%となっており、守口市の方が空き店舗問題が深刻だといえます。また、空き店舗の見通しについては、「少し増えそうだ」と答えたのが門真市(69%)守口市(48%)、「大幅に増えそうだ」と答えたのは門真市(0%)守口市(19%)と、守口市の方が深刻だといえます。空き店舗解消対策については、「方法が見つからないので何もしていない」と答えたのが門真市(62%)守口市(68%)、「努力はしているが効果がない」と答えたのが門真市(14%)守口市(24%)と、両市ともに対策に困っている状況がわかります。
 また、商店街で抱える問題点のうち、門真市に特徴的な問題としては「駐車場がない、不足している」があがっています。

2.経済団体

 地域の中小企業は、市ごとに商工会議所や民主商工会といった経済団体を組織し、自身の利益を増進するために、市当局に対しさまざまな要求をしています。 数多くある経済団体のうち、商工会議所は、門真市、守口市に、それぞれ存在していましたが、1970(昭和45)年に合体して、2市にまたがった商工会議所ができました。その経緯を、守口門真商工会議所『守口門真商工会議所20年の歩み』(1990年)を参考にしながらたどってみましょう。
門真市では、戦後、中小企業の経済団体として商工会がつくられ、商工会議所への昇格と会館建設を目指しましたが、通産省(当時)が反対し、なかなか昇格が実現しませんでした。これに対し、守口市では、地域の中小企業の組織化が活発で、商業・工業別に、守口市商業連盟と守口市工業会がつくられ、これらの組織をもとに、商工会議所が設立されました。
そして、守口商工会議所が「守口商工会議所の組織を活用し、両経済団体の合併が実現すれば、事業運営はより活発に行え、商工業者に対する指導育成も充実し、会館建設についても強力に進められる」と、門真市商工会に手を差し伸べたことから、1970(昭和45)年に門真市商工会と守口商工会議所との合併が行われました。合併が実現したのは、『守口門真商工会議所20年の歩み』によれば、守口市、門真市の地域的社会的共通性、産業構造の類似、商圏の交錯、道路・交通の一体性、行政組織の広域化等の事情があったからだといいます。

3.自治体産業政策

 それでは、最後に、門真市・守口市の産業政策において、中心産業である工業がどう位置づけられ、どのような政策が行われているのかを検討してみましょう。

(1)基本構想・基本計画における工業の位置づけ

1)門真市

 現在、門真市において執行中の総合計画は、『いきいきかどま2010』(門真市第4次総合計画)(2000年12月策定)で、2010(平成22)年が目標年次となっています。基本構想のスローガンや基本計画における「まちづくりの基本目標」をみると、快適な生活環境づくりを重視する姿勢が読み取れます。
これに対し、工業については、全体的に低い位置づけがなされているようです。工業は「まちづくりの基本目標」の中で4番目の「安全な市民生活と活力をはぐくむ産業を創造する都市・門真−安全や活力の創造−」に位置づけられ、具体的には、産業構造の高度化をめざすこと(先端産業・情報関連産業・生活文化提案型産業の導入、ネットワーク型情報交流システム整備による中小企業の活性化)が謳われています。

2)守口市

 守口市では、『守口市21世紀計画−定住のまち−』を、1994(平成6)年に策定しています。目標年次は2005(平成17)年となっています。守口市の場合も、基本構想のスローガンや基本計画「4つの都市像」をみると、住民の健康や生活の質の向上を目指す姿勢が強く打ち出されています。
 工業については、基本計画「4つの都市像」の中で、4番目の「豊かな暮らしを支える安全なまち」で、「活力ある豊かな暮らしの形成」が謳われ、中小企業振興や、住工混在地区の環境改善などが目標として挙げられています。また、「研究開発を重視した付加価値型産業への転換」も目指しています。

(2)自治体産業政策

1)門真市・守口市の自治体産業政策メニュー

 門真市、守口市の自治体産業政策のうち、中小企業政策をみると、だいたい同じ政策メニューを実施していることがわかります。たとえば、勤労者互助会、商工団体等振興事業、中小企業事業資金融資事業、小売商業者振興対策事業、中小企業大学校等受講料補助事業などが、両市で行われています。しかし、その内容は、通産省(当時)が行った少し以前の政策の域を出ていません。
 予算規模でみると、商工費の歳出総額(2002年度)に占める割合が、門真市(0.5%)、守口市(0.2%)となっており、商工業が盛んである割には、予算規模は小さいといえるでしょう。

2)積極的な守口市の産業政策

 しかし、門真市に比べると、守口市の場合は、より独自的な積極的な産業政策を行っています。たとえば、第1に、市職員自ら調査員になって製造業悉皆調査を行いました(調査対象事業所2,114社、回収率100%)。2002(平成14)年度には、この実態調査をもとに、「工業活性化ホームページ支援事業」を実施しています。第2に、商業で「空き店舗等活用促進事業補助」といった興味深い施策が行われています。



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