小泉内閣・財界こよる自治体版構造改革が進行する中で、住民のくらしの深刻な実態を明きらかにします。
そして「小さな政府・自治体」が、これからの日本をどこへ導こうとしているか、その「改革」の中身とねらいを探ります。
さらに、憲法をふまえた「自治体らしい自治体」をつくりあげていく対抗軸と運動のあり方を追求します。ぜひ、ご参加ください。
シンポジウム報告
日時 :2006年4月22日(土)午後1時30分〜4時30分
会場 OMMビル2階会議室(地下鉄・京阪天満橋)
参加費 1000円(資料代)
内容
●講 演 都留民子氏(広島県立大学教授)
● シンポジウム
シンポジスト 都留民子氏(広島県立大学教授)
藤永延代氏(おおさか市民ネットワーク代表)
谷 真琴氏(自治労連近畿ブロック副議長
大阪自治労連執行委員長)
コディネ一夕ー 二宮厚美氏(神戸大学教授)
主催 日本自治体労働組合総連合・同近畿地方ブロック協議会
プロフィール
都留民子氏(広島県立大学教授)
1952年生まれ。_明治学院大学大学院社会学研究科修士課程(社
会福祉学専攻)修了、社会福祉学博士。現在、県立広島大学教授。
大学で社会保障学を教え、広島市、大牟田市の失業問題を調査して
いる。
【主要著書】
『欧米のホームレス問題(上)(下)』(共編著)
法律文化社2003年2004年
『行動する失業者−ある集団行動の社会学』(監訳書)法律文化社2003年
『失業の社会学−フランスにおける失業との闘い』(訳書)法律文化社2002年/『フランスの貧困と社会保障一参入最低限所得(RMl)への途とその経験』)法律文化社2000年。
藤永延代氏(おおさか市民ネットワーク代表)
生活協同組合運動から環境問題へ。大阪府能勢町にあるゴミ焼却
施設の調査にも参加、ダイオキシン問題の解決のためデンマークへ
視察に。
また、デンマーク西北部のトウイ市のフォルケセンターと
いう研究所で研究活動、その後市民の出資で風力や太陽光をつかったエネルギーをとりあげる自然エネルギー市民の会活動を展開、さらに、サステイナブルシティをめざしてソウル市を視察、日韓共同で環境問題の研究活動中。
雪印乳業食中毒事件、BSEなど食品衛生問題にもとりくみ、現在、保健所をまもる大阪市民の会副会長。大阪住民のための情報公開センター所長。
谷
真琴氏(自治労連近畿ブロック副議長 大阪自治労連執行委員長)
1949年生まれ。1972年東大阪市大職。
1973年以降東大阪市職労の役員を歴任。1991年国民健康保険料値下げ直接請求運動の中心的役割を担ったことへの報復として当時の清水市政により国保職場から不当配転を受ける。また、長尾革新市長のもとで市職労委員長として活躍。
その後、大阪自治労連書記長を経て2005年から大阪自治労連執行委員長。明るい民主大阪府政をつくる会事務局長として、府政刷新のため奮闘中。
二宮厚美氏(神戸大学教授)
1947年愛媛県生まれ。経済学、社会環境論専攻。社会活動として学童保育指導員専門性研究会会長。福祉倶楽部塾長。現在、神戸大学発達科学部教授。
【主要著書】
『構造改革と保育のゆくえ』(青木書店)
『構造改革とデフレ不況−やさしく、ふかく現代日本経済入門』(新日本出版社)
『生きがいの構造と人間発達』(労働旬報社)など多数。
シンポジウム報告
4月22日、自治労連近畿ブロックは昨年に引き続き、小泉「構造改革」は私たちのくらしに何をもたらしたのかを明らかにし、自治体の職場(現場)の破壊がどのようにすすんでいるのかを告発、今求められている「自治体らしい自治体」の姿を改めて確認しようと、公開シンポジウムを100人の参加で開催しました。
問題提起をかねて冒頭、講演に立った広島県立大学の都留民子教授は、先のフランスでの学生の運動に端を発した国民運動が、600万人ともいわれるデモなどを展開し、政府の政策を変えさせた運動に触れ、この運動に関わって、日本のマスコミは「すわ暴動か!」など揶揄する報道を繰り返し、一方で我々の側では「革命の伝統がある国、政治意識の高さ」という評価をしていたが、実はそうではなく、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国では、「市場経済の氾濫が社会(人間共同体)を破壊する」という価値判断(基準)があり、人々が生きていくうえで「賃金に多くを依存しない」「商品化しない領域を残す」という考え方が社会に定着していること、公務や公共性を大切にする考え方が、手厚い社会保障につながっていることを明らかにしました。
また振り返って日本では、「経済」だけで言えば十分すぎる達成があるにも関わらず、再配分に大きなゆがみをもっており、「財政赤字」を口実に、国民生活を切り捨てる流れが支配していること、そういう意味で、「財政再建至上主義」を打ち破るイデオロギーを国民・労働者の中に広げていくことが大切であり、「貧困が進めば国民が立ち上がる」というものではなく、さらに分断と対立がすすめられる危険性をはらんでいることを鋭く指摘されました。
この提起を受け、後半のシンポジウムでは、おおさか市民ネットワークの藤永のぶよ氏が、BSE、サプリメント、コンビニ弁当、輸入寿司ネタなど、「規制緩和=民間委託」はなにをもたらしているかについて具体的な例を挙げ告発、こうした「規制」を支えてきた「公」が、目先の「コスト比較」で「民」に移され、「公の見えざる富」が失われていることを報告。
また2番目のシンポジストの都留教授は、「格差社会」を克服していく上での「国民・住民運動のリーダー」としての労働組合運動の役割を強調しました。
3番目のシンポジストとして、大阪自治労連の谷委員長は、大阪自治労連がこの間作成した「自治体職場からの告発レポート」に触れ、現場で働く自治体労働者の思いとはウラハラに、「自治体が自治体でなくなる」事態が進行していることを強調、自治体労働組合として、住民の権利拡充と自らの職場や働きがいを拡充する運動をともにすすめる統一的な運動を、改めて再構築する必要性をのべました。
フロアからも、「生活保護の職場での、住民団体との対立意識」の問題や、尼崎で市民の公共の「足」を守る「市民の会」の結成、滋賀では栗東新駅など大企業本位の県政を変えるたたかいを、自治体労働者自らが立ち上がってすすめていることなどの報告がおこなわれました。
最後にシンポジウムのコーディネーターをつとめた神戸大学の二宮厚美教授から、このシンポでさまざまな国民の実態、自治体現場の実態が語られ、互いの理解が広がっていること、自治体労働者に対して「自らの権利が守れない・守ろうとしない者は他人の権利を守れない」と激励、格差社会の進行の中で、差別・分断政策を打ち破って共同を広げようと述べ、シンポジウムを閉じました。