合併の理由として、行革をすすめ行財政基盤を強化し、財政再建を果たすとしています。しかし、合併によって財政状況が好転するのでしょうか。


 合併特例債による「合併バブル」で新たな財政危機
 平成17年3月までに合併すれば、政府から財政支援策を受けられるとしていますが、その最大の支援策が合併特例債です。しかし、合併特例債は借金です。7割は国の交付税で補てんされますが、3割は将来借金として残ります。「合併バブル」で新たな財政危機が進行し、将来の市民に大型公共事業のツケを強いることになります。

篠山市では特例債の償還のために補助金の引き下げ
 「合併の優等生」ともいわれる兵庫県篠山市では、ミュージアムや市民センター建設、駅周辺の整備などハコモノ事業に合併特例債を使い、その償還のために120もの各種団体への補助金を1割引き下げ、保育所への送迎バス料金の引き上げなど市民負担が増し、財政難に拍車がかかっています。

合併をしても、合併特例債をつかわなければ、
借金は増えないのでは
 
確かに、合併特例債による不要不急のハコモノ事業・公共事業を進めるべきではありません。両市合併問題協議会でも合併特例債に頼らず、合併問題を考えるべきとの意見もあります。 しかし、合併をすれば、合同庁舎の必要があり、そのことによって、総務・企画・議会などの管理部門の職員が削減できるのです。その財源として合併特例債の活用が予定されているのです。 合同庁舎を建てず、現在の庁舎を活用している事例が、2001年に田無市と保谷市が合併した西東京市(東京都)です。市長室・企画・総務・議会部門は田無庁舎に、保健福祉・都市整備・防災環境・教育部門は保谷庁舎におかれ、市民生活・税務部門は両庁舎にあります。その結果、市民は、用件によって、どちらかの庁舎に行ったり、両方に行ったりしなければならないなどの問題が生じています。 また、部長会議をおこなうために、保谷庁舎の部長は、田無庁舎に行かなければならないなど、各部門間の調整会議の開催も大変で、議会開会中は、保谷庁舎の管理職が議会のある田無庁舎につめて、自席にいないという状況がでるなど、事務の執行上、ロスを生んでいます。その結果として職員の削減もおこなえません。 国の合併財政支援策である合併特例債を使わないのであれば、なぜ、問題の多い合併をするのかという根本問題につきあたります。

●合併特例債とは
 合併市町村が、新しいまちづくりのために行う「新市建設計画」に基づいておこなう事業や、基金の積立にかかる経費について、合併した年度とこれに続く か年度に限り、その財源として借り入れることができる借金(地方債)のことを合併特例債といいます。
 対象事業費の約95%を合併特例債であてることができ、更に返還するときに70%分が普通交付税としてもらえます。



 合併すれば地方交付税は大幅に減る
 国からの地方交付税は、合併の特例措置として、下図のとおり、合併10年間は旧市の合計額を下回らないように算定されますが、その後5年間は段階的に減らし、合併16年目からは合併の特例は無くなり大幅に減ります。目先の国からの財政支援(アメ)にとらわれず、15年、20年先の財政シミュレーションを作成し、合併の是非を考えていくことが必要です。
 市役所職員数を少なくして(類似団体との比較による推定試算852人の削減)経費を節減するとしていますが、確かに管理部門の職員をある程度減らすことは可能ですが、教育・福祉など住民生活に密着した職員を減らすことは住民サービスの低下につながります。
 合併をすれば財政規模はたしかに大きくなります。しかし、財政規模が大きくなることと、財政が豊かになる―財政力が強くなることとはまったく別問題です。


●地方交付税とは
 地方交付税には普通交付税と特別交付税の2種類があります。
 普通交付税は、すべての地方公共団体が、等しくかつ適切な水準で自主的に行政サービスを行うことを目的に、各地方公共団体ごとに基準財政需要額(その団体の人口・面積・立地条件等から理論的に算定される必要経費)が基準財政収入額(基準財政需要額と同様、理論的に算定されるその団体の収入)を上回る額、すなわち財源不足額に応じて配分されるもので、国によって条件をつけられたり使途を制限されたりすることがないため、地方公共団体の最も安定した財源のひとつとなっています。
 特別交付税は、普通交付税の補完的な機能を果たすもので、普通交付税において補足されなかった、あるいは普通交付税の算定後に生じた特別の財源需要等を考慮して交付されるものです。
 また、地方交付税の制度には、自治体間の税収のアンバランスを調整する機能とともに、標準的な行政水準を財政的に保障するという2つの機能があります。
 地方交付税制度の趣旨の根拠は、国民の生存権などの基本的人権の保障とともに、地方自治を明記した日本国憲法と地方自治法にもとめることができます。ところが、いま、この地方交付税の制度を根本から変質させて、全国どこの市町村でも標準的な行政を保障するという、地方交付税の特質をできるだけ切り詰めようというたくらみがすすんでいます。それが、政府ですすめられている「地方交付税の見直し」です。


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