府暫定予算 嘆く市町村

   2008年3月8日付「朝日新聞」より

 府が発表した暫定予算案が、市町村に波紋を広げている。府は補助金などの形で市町村に支出する事業を、前年度当初予算の約4分の1の1315億円分しか計上しなかった。

  教育、老人福祉、医療など暮らしにかかわる事業や、国などと資金を出し合う公共事業の負担金が、前年度の4カ月分だけだったり、ゼロになったりしている。

  8月以降の本予算で復活しなければ、いったん予算計上した事業を中止せざるを得ない事態も予想され、関係者の不安は募る。

密集地の解消・駅バリアフリー化・・・

   宙に浮く防災・福祉

 密集市街地に整備された公園。奥には、住宅が撤去された事業継続中の更地が広がる=門真市石原町で

 

 ●「現地見て」
 
 門真市では、市内3地区計約2ヘクタールで進めている密集市街地の解消・再整備事業に付く府支出金約2億円が暫定予算に盛り込まれなかった。

 府内では現在、門真、豊中、東大阪など6市で同事業があり、府は今年度、約3億円を負担。半分近くを門真市分が占める。

 同市内には、高度経済成長期に建てられた大量の文化住宅や長屋が残り、路地の入り組んだ密集市街地が広がる。防災上も危険なため、国の要綱に基づき、国が50%、府・市が25%ずつを負担して事業を進めてきた。

 地主など権利者の合意を取りつけて1ヘクタール程度の面積を確保し、住宅の建て替えを進めるとともに、道路を広げ、公園や緑地を整備する。87年度からこれまでに5地区計約3ヘクタールが完成。現在進む3地区は、既に住宅の撤去に取りかかっており、08年度は計約8億円の事業を予定している。

 地権者らでつくる「石原東・大倉西地区共同整備事業組合」に加わる不動産会社「光亜興産」の専務で、同組合事務局長を務める川村光世さんは「始めた以上はやり遂げないといけない事業」と話す。「橋下知事に現地を見てもらって、生命の危険もあることを理解してもらいたい」

 府が茨木市北部で建設を進める安威川ダム。同市は下水道や道路の付け替えなど周辺整備の事業を予定している。4月に市長選を控えており、骨格予算の新年度予算では経費を計上していないが、本格予算の6月補正では周辺整備に約3億1千万円を計上する予定で、府からも約1億円の負担金を見込む。

 安威川ダムは、1967年の豪雨をきっかけに、治水と利水を目的に計画が決定された。しかし、近年の水需要の減少に伴い、府は06年1月、規模を縮小して事業を継続すると決定した経緯がある。総事業費は約1400億円。

 同市は00年に周辺整備に着工し、「水源地域整備事業」の負担金として、府から毎年、費用の一部が支払われている。

 「周辺整備への補助だけでなく、万一、本体工事が中止されることになれば影響は大きすぎる」と市の担当者は話す。


●計画遅延も

 府にとって最大の補助金支出先となる大阪市。08年度予算案は、府からの補助金や交付金など約849億円が全額支出されることを当て込んで組んだ。その中で、府の暫定予算案で計上されなかった事業は18件計約6億3千万円だ。

 そのうちの一つが交通局が進める市営地下鉄のバリアフリー化で、2駅のエレベーター設置費として府からの補助金約1847万円を計上している。

 御堂筋線北花田駅(堺市)はすでに工事に着手し、08年度に完成予定。そのため、本予算で補助金がつかなかった場合も「市の持ち出しになっても継続する」。しかし、10年度完成に向けて計画段階の谷町線大日駅(守口市)については、「予算がつかなければ計画を遅らせることもある」という。