「構造改革の現場から」 「格差社会」C

門真市 企業城下町で国保滞納

   2006年2月6日付「赤旗」より

 京阪電鉄門真市駅を降りると、すぐに「Panasonic」のマークがある工場が目に入ります。大阪府門真市は、家電最大手の松下電器産業の本社・工場が集中する「企業城下町」です。
 松下電器は2001、02両年度の赤字転落から 「V字回復」を果たし、05年9月の中間決算では、バブル期以来の高収益をあげました。

          


 全国で最低


 一方で門真市の国民健康保険料の収納率は75・1%(04年度)です。噴火被害を受けた東京・三宅村を除くと全国最低です。国保料滞納世帯も増える一方
で、加入世帯の38%(05年)にのぼります。


 「月十万円そこそこの収入の人間は、死ねいうんか」。門真市在住の宮内雅子さん(58)=仮名=は、昨年7月に、いきなり国保料の滞納分八万円の一括払いを市から請求されました。
 パンの販売のパートをしている宮内さん。年収は、多くて160万円程度です。国保料と介護保険料を合わせると年16万円で収入の一割になります。
 市の通知では、「資格証明書」の発行などの制裁措置″まで明記していました。「資格証明書」になれば、窓口でいったん医療費全額を払わなければなりません。
C型肝炎を患う宮内さんにとって、命にかかわります。

 すぐに、「門真生活と健康を守る会」(守る会)に相談して、市に抗議し、通知を撤回させました。
 宮内さんのような例は、少なくありません。

 「41歳の自営業で収200万円の人の国保料、介護保険料は合計30万 円」−門真市のホームペー ジにはこんな高額の「計算例」が堂々とのっています。

 「生活保護基準以下の生活をしている人が、収入の一割の保険料を払えるわけがない」と話すのは、門真
守る会の江田みどり事務局長。

大リストラ
   
 市の経済と市民生活に影響を与えたのは、松下電器の大リストラです。01年度に「早期退職者優遇制度」を導入し、04年度末までに国内従業員数は約3万7千人も減少しました。


 門真市では、松下など企業からの法人市民税は、1980年代後半から90年代初頭には年70億円を超えていました。財政が豊かな時期は、地方交付税の「不交付団体」だったこともあります。


 松下が業績を回復したにもかかわらず、04年度の門真市の法人市民税収は19億円。最高時(88年度)に比べて50億円以上も少ない額です。


 「みなし外国税額控除」ー海外に進出した企業が、外国で税金を減免されても、払ったものとみなして国内での払うべき税額から控除される制度です。松下の海外生産比率は05年で47・4%で、約5割になり
ます。


 「みなし税額控除で、企業がたくさん収益をあげても、法人税、市民税がほとんど入らない現状があるのではないか」−門真市議会で、日本共産党の福田英彦市議がこうただしました。
 市民税課長は「大きな電器産業において、そのようなことが見受けられる」と答えました。
 大企業の高収益とリストラ、伸びない税収、増える国保料滞納者−。門真市の現実は、日本における「貧困と格差の広がり」の一端を示しています。