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中世の趣を残す西部ヘラートの人々。一片の絵画を思わせるこの街も、空襲に襲われた=写真集「アフガンからの風」より
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羊を追う少年、綿花を摘む女性たち−−。門真市在住の写真家、長島義明さん(66)が戦争で疲弊する前のアフガニスタンを撮り収めた写真集「アフガンからの風」(芸術新聞社刊)を上梓(じょうし)した。
200点に及ぶ作品には飛び交う銃弾も遺体もなく、人々のありふれた日常をつづる。撮影から31年。長島さんは「あの時は観光写真に過ぎなかった一枚が、今や平和とは何かを問う一枚となってしまった」と話している。【平川哲也】
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写真集「アフガンからの風」を上梓した長島さん |
美しい自然と文化遺産、人々のありふれた日常
大国の侵攻、内戦…失われた平和
「アキ(長島さんの愛称)、アフガンへ行ったか?」。欧州を拠点に活動していた77年、長島さんは写真家のスイス人男性に一冊の本を託された。そこに住む人と、自然だけを紹介しただけの本に魅せられた。欧州とアジアの文化が交差する土地で、厳しい自然とともに生きる人たち。愛機のカメラを手に、機上の人となるまでは時を要しなかった。
約45日間、アフガンを旅した。首都カブールの市場では足踏みミシンを使う仕立屋の男性に、東部・コルム村近郊の荒野では木とゴムで作ったパチンコで小石を放つ少年に、レンズを向けた。シルクロードの面影を残す街並みと同じく、長い時間、人の営みは変わっていないと感じた。ところが、帰国して1年を待たずに「地上の楽園」とされたアフガンは、大国の軍靴に踏み荒らされてゆく。
79年、社会主義政権の樹立をもくろむ旧ソ連が侵攻。89年に撤退後も平穏は遠く、内戦状態が続いた。そして01年、米国が空爆を始める。カブールはテロが相次ぎ、コルムでは米軍の誤爆で多くの住民が命を失った。ごく当たり前の生活が、壊されてゆく。一方でアフガンが、あたかも悪のように報じられる。「そんな国じゃないんだよ、アフガンは」。悔しさを募らせた。
写真集の後書きで、長島さんは次のように触れている。「テレビや雑誌のアフガンは、私が見たアフガンとはあまりにもかけ離れている。見るに堪えない惨状ばかり流し続ける戦争報道から、平和を希望する気持ちが芽生えるとは思えない」。AB判200ページ。3990円。22日まで大阪市西区京町堀1のギャラリー松井(06・6448・1685)で、出版記念写真展を開いている。