地方分権委が第二次勧告
政府の地方分権改革推進委員会(委員長・丹羽宇一郎伊藤忠商事会長)は2008年12月8日、国と地方の役割分担を改変することを求める第二次勧告を決定しました。勧告は同日、麻生太郎首相に提出されました。
くらしなど最低基準見直しし、生活や福祉の後退
二次勧告は、国が住民のくらし、福祉、教育の最低基準を法律などで自治体に求めている「義務付け・枠付け」の大規模な見直しを提案。保育制度の最低基準の撤廃など4076項目の廃止を打ち出し、国民生活や住民福祉に重大な後退をもたらしかねない中身となっています。
廃止するとしているものの中には、保育所の子ども一人当たりの面積など児童福祉施設の最低基準の順守義務規定(児童福祉法第45条第2項)などが含まれています。現行の最低基準は国際的に見ても極めて貧しく、とりわけ面積基準については1948年制定以来、一度も改善されていません。
保育については、児童福祉法第24条第1項の「保育に欠ける」児童に対する市町村の保育の実施義務も、廃止の対象となっています。「『保育に欠ける』という基準を立て、かつ一定の保育所という施設について定め、そこで保育を実施せよということになると、これはかなり立ち入った義務付け・枠付けになる」というのが、その理由です。子どもの健やかな成長と、子育てと仕事の両立を支える保育制度までも「地方分権」の名で解体してしまおうというところに、勧告の危険性が端的に現れています。
「出先機関改革」は「将来の道州制への道筋に」
道州制を加速
勧告では、国の出先機関の見直し案を示しました。地方への「権限移譲」を名目に、出先機関の業務を削減することで、現在の9機関を統合するなどして廃止し、約三万五千人の公務員をリストラする計画も打ち出しました。
国土交通省地方整備局など6機関は、企画・立案部門を「地方振興局(仮称)」に、直轄公共事業の実施部門は「地方工務局(仮称)」にそれぞれ統合するとしています。
厚生労働省関係では、中央労働委員会地方事務所を、本局に業務を移管し、廃止するとしています。
勧告では、「本勧告の出先機関改革」は「将来の道州制への道筋における礎となるものと考えている」と明記。一次勧告にはなかった道州制への位置づけを強調しました。道州制論議を加速させる狙いです。
「道州制」の狙いは、国の仕事を外交や軍事、司法、全国規模の開発事業などに限定する一方、憲法に基づいて本来国が責任を負うべき、国民の福祉と暮らしを守る仕事を地方自治体に押し付けることにあります。国の責任を財政的に裏付けている福祉・教育の負担金・補助金などの廃止・縮減にもつながりかねず、地方のいっそうの疲弊と地方自治の形がい化をもたらす恐れがあります。
「地方分権」に名を借りた国の責任投げ捨て・住民福祉の切り捨て路線はやめるべきです
政府は勧告を受けて、2008年度中に工程表となる計画を策定するとしています。
自治労連が地方分権改革推進委員会第2次勧告の決定にあたって書記長談話 (自治労連HP)
道州制とは 地方自治の形骸化が一挙にすすむ
道州制のあり方 地方制度調査会答申固まる