夕張市財政破たんの教訓
 明確にすべき政府の責任

 

   2007年3月13日付「しんぶん赤旗」より

 
 
保母 武彦

  ほぼたけひこ・島根大学名誉教授=1942年生まれ。

  財政学・地方財政論・地域経済論。自治体問題研究所理事

 夕張市議会は、2月28日、地方財政再建促進特別措置法に基づく財政再建計画を議決した。3月早々に、国の同意を得て財政再建団体となり、政府の管理下で18年間に約353億円の借金返済に取り組むこととなる。返済額は、標準財政規模(約44億円)の8倍にも及ぶ。

「夕張効果」で 推進される 「地方行革」


 借金の返済資金は、住民負担を全国最高水準に、公共サービスを全国最低水準にすることなどによって捻出(ねんしゅつ)される。

 市税を最高税率にするほか使用料を引き上げる一方で、市立病院の廃止と公設民営診療所化、小中学校の統合、、市民会館や体育
施設などの休止・廃止や、各種補助金の纏減が行われる。
 一般職員給与を平均30%カットし、06年度当初269人の市職員(消防職員を除く)を、四年後に103人にする。高齢化が進む、山坂の多
い夕張市では、生活できない人がでてくる可能性も少なくない。


 財政破たんの怖さが宣伝され、全国で今、「第二の夕張にならないために」という言葉が飛び交っている。この一言で、いとも簡単に、行政サービスを抑え、人件費をカットし、各種料金を引き上げる自粛″が進んでいる。「夕張効果」を活用した地方行革の推進である。多くの自治体が財政破たん状態に陥っていて、「第二の夕張にならないために」の言葉が抵抗なく浸み込む素地が形成されているからである。

 「夕張効果」を使った地方行革攻勢に対処するために は、まず夕張問題を正しく知る必要がある。財政放たんの主因は国政にある。


 政府と北海道は、夕張市の過大な観光開発と放漫な財政運営が原因だとして、一切の責任を夕張市に押し付けてきた。言い換えれば、政府と道には責任がないという主張である。
 

  果たしてそうか。経過を見れば明らかである。夕張市を財政破綻させた根本原因は、三つある。いずれも、政府が推進してきた政策と深くかかわっている。


 第一の原因は、炭鉱閉山の跡処理負担である。夕張炭鉱は、国のエネルギ1政策の転換に伴って閉山が相次ぎ、90年に全(すべ)てなくなった。市は、残された市民が暮らせるように、炭鉱会社(北炭)が所有する土地・住宅・病院などを買い取り、この処理に583健円を支出した。そのための借金(市債発行)が332億円である。今後の返済総額353億円と比べれば、市の借金がいかに大きかったかが理解
されよう。この借金は、国策のツケが市財政に転嫁された結果である。


 第二の原因は、観光・リゾート開発とその関連の財政負担である。市は、閉山後の主軸産業として観光を選んだ。国が旗振りをしたリゾート開発政策に乗って、市は観光開発を拡大した。北海道庁も夕張市の観光開発に期待した。 ところが、リゾートブームは去り、進出した松下興産株式会社は早々に夕張から撤退した。市は、市民の就労の場を維持するためにスキー場やホテルを買い受け、そのために借金を増やした。これは、市が国の政策に無批判に追随した結果、国政のツケが地方自治体に転嫁された借金である。


 第三の原因は、国の行財政改革の夕張市財政への影響である。政府は、01年度、閉山後の地域振興が不十分なまま「産炭法」を失効させた。
 これに追い討ちをかけるかのように、地方交付税の「産炭地補正」をなくし、「三位一体の改革」によって地方交付税を削減した。夕張市の普通交付税は、91年度と05年度を比べると、単年度で約38億円減っている。これから始まる財政再建期前半の年返済額10〜15億円と比べてみれば、交付税の削減が財政破たんの致命傷になったことが容易に理解される。これは、地方財政を犠牲にした国の行革の結果である。

交付税削減が致命傷

 地方自治体は国政のツケ排除を

 

第二の夕張にならないために必要なこと

 以上の三つの原因からすれば、財政破たんの責任を夕張市に被(かぶ)せて、「自己責任」で借金を返済することに道理はない。政府は、原因 に照らして相応の負担をすべきである。

 夕張市が不適切な会計処理を行い、債務を累増させてきた責任を問うことは、政府を免責する理由にはならない。


 「第二の夕張にな らないために」と称した昨今の行革は夕張の教訓を学んでいるとは言えない。夕張では、自主的な行革で05年までの44年間に16億円を節減したが、その成果は普通交付税の削減で一瞬にして消えた。政府の地方財政潰(つぶ)しを放置しておけば、自己努力も報わいのである。

 正しい意味で「第二の夕張にならないために」は、夕張が財政破たんした三つF原因から、政府も地方自治体も教訓を学び、その過ちを繰り返さないことが必要である。そのためには政府に、夕張の事態を 引き起こしたことの反省があって然(しか)るべきである。また、地方自治体も、国の言いなりになるのではなく、自立して、地方自治の立場を貫く努力をすべきである。


 夕張市の財政破たんからから教訓を引き出すとすれば、次の三点であろう。

 第一に、政府は国政のツケを地方自治体に転嫁してはならない。地方自治体は国政のツケを排除する毅然(きぜん)とした態度を貫かなければならない。


 第二に、政府は、地方自治と地方分権を尊重し、国家レベルの政策で地方自治体を引き回すことをやめなければならない。地方自治体は、政府の政策に安易に乗るのではな く、地域に合った堅実な政策を立案、遂行しなければならない。


 第三に、政府は、地方分権の時代であることを認識し、地方財政を逼迫(ひっぱく)させるような政策をしてはならない。夕張の財政破たんの致命傷となった地方交付税の削減政策は、直ちにやめるべ きである。 地方自治体は、国の制度改変によって財政困難に陥らないよう、連携を強めて地方財政強化の主張を強める必要がある。


 夕張問題の詳細については、先月に出版した次の書籍をご参照ください。
○保母武彦・河合博司・佐々木忠・平岡和久薯『夕張 破綻と再生』自治体研究社
○保母武彦著『「平成の大合併」後の地域をどう立て直すか』岩波ブックレット

 ※  青の太字は門真市職労で強調

 

地方財政破綻前に外部監査 自治体健全化法案、提出へ   2007年3月7日付「朝日新聞」より