当面する地方税財政改革に対する自治労連の提言  政府の進める「三位一体改革」への対案

     
 
1.政府の「三位一体改革」は自治体の存立にかかわる
 2004年度の地方財政計画による各自治体の予算編成を通して、政府の進める「三位一体改革」は自治体の期待に応えるものではなく、自治体を深刻な財政危機に陥れることが明らかになりました。

 梶原拓全国知事会長が記者会見で、「地方交付税の削減は不意打ちだ。三位一体改革は、改革ではなく、改悪になってしまうと多くの知事が失望してしまった」と述べたのも当然です。


 政府の「三位一体改革」は自治体の自主性を強化し住民参加による自治を発展させるものではなく、国の失政と赤字を地方に押しつけたものに他ならず、自治体を住民サービスの抑制、市町村合併、アウトソーシングをなどに追い込むものとなっています。
 現在のまま事態が推移するならば、「三位一体改革」の残り2年間で地方交付税の大幅な削減や予算規模の縮小によって、住民生活を支える施策のいっそうの後退をはじめ、自治体の存立に関わる重大な影響が出ることは明らかです。

2.私たちが望む地方税財政改革
 地方税財政改革は、その実施によって地域の実情に即し、住民の福祉とくらし、地域を維持、発展させ、地方の裁量を拡大するものでなければなりません。
 そのためには、「骨太の方針2003」が打ち出した地方財政計画の圧縮にもとづく地方交付税削減を元に戻し、自治体にとって必要な本来の税財政改革に立ち返るべきです。


@ まず地方の歳出規模と地方税収入のギャップをうめるために税源移譲を確定し、しかる後に国庫補助負担金の削減を検討すべきです。


A 税源移譲は、自主財源の拡大になりますが、同時に、都市と農村部などの自治体間の財政力の不均衡が新たに拡大するため、地方交付税制度を中心としてその調整を行い、すべての自治体に財源を保障すること堅持すべきです。


 しかし国は地方交付税の算定基準において「段階補正」の縮小や、測定単位における「面積」基準を縮小し「人口」基準への一元化を進めるなど、農村部の切り捨ての方向を強め不均衡が拡大されてきています。


 地方交付税は、憲法で明記された地方自治体の「その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する(94条)」という権能を実現するため、その「交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによって、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化する(地方交付税法1条)」ものであり、それは国が意図的に圧縮したり、政策の道具にできるものではありません。


 私たちは、多様な社会的自然的条件の中で暮らす国民の生活権を保障するためには、ナショナルミニマムの維持は依然として重要であり、過疎・過密、辺地、離島、気候などを含めた地域固有の行政需要を反映させるのは当然のことと考えます。都市部自治体と農村部自治体が連帯し、ともに住民生活や自治を発展させることができる制度の確立を強く望みます。
 私たちは自治体がその本来の役割を発揮するために次のように「当面する税財政改革に対する提言」を公表し、各方面の議論を期待するものです。

3.具体的な提言


(1) 税源移譲を先行して実現すること


@ 「片山(前総務相)プラン」で5.5兆円の税源移譲が示されましたが、税源移譲の規模と内容を先行して決定すること。


A 税源移譲は所得税を中心として、低所得層の負担の増加につながらないように、所得税と住民税を統合した上で、その最低税率部分(10%)を地方に移譲すること。

(2) 自治体の自主的行政運営が拡大するものを優先して廃止し、国がナショナルミニマムの実現に責任をもつ国庫補助負担金は存続させること


@ 税源移譲に見合って、国庫補助負担金を廃止・縮減し、自治体の自主的行政運営の拡大をはかること。国庫補助負担金の廃止・縮減の具体的内容については、地方団体と十分な協議を行うこと。なお、単なる補助率の引き下げは絶対に行わないこと。


A 義務教育費国庫負担金、生活保護費国庫負担金、保育所運営費負担金など、国がナショナルミニマムの実現に責任を持つと判断されるものは、現行制度を維持すること。


B 「奨励的補助金」についても、一方的な削減をせず税源移譲の対象とすること。


C 公共事業(投資的経費)関係の国庫補助負担金については、道路特定財源等の一般財源化を行うことを含め、事業の継続が必要なものはその廃止・縮減分を税源移譲等の対象とすべきであり、事業の継続の可否は、地方の意見を聞きながら一定のルールで行うこと。

(3) 地方交付税制度を堅持、充実すること


@ 地方交付税は財源保障機能と財政調整機能を併せもつ制度として引き続き堅持、充実すること。


A 地方交付税制度にかかわり、地方団体や専門家の参加で「地方財政委員会」(仮称)を設置し、地方の声を反映できる開かれた透明な制度を確立すること。


B 地方財政計画や基準財政需要額における経常的経費と投資的経費は決算額との乖離があり、実質的に自治体の超過負担を示している。投資的経費と経常的経費のバランスを逆にすることによって、地方交付税を充実すること。


C 地方交付税の算出にあたっては、合併による事業や単独事業推進のための交付税措置、アウトソーシング等の経費を基準に単位費用を算出するなどの誘導をやめ、「合理的、かつ、妥当な水準において地方行政を行う場合又は標準的な施設を維持する場合に要する経費を基準(地方交付税法2条)」とすること。


D 税源移譲に伴って、歳入総額が減少する自治体には、地方交付税制度の基準財政需要額の算定に基づいて、確実に措置すること。なお、地方交付税の総額と「法定税率」分との乖離については、必要な「法定税率」の引き上げを行うべきですが、当面は、国の責任によって財政措置を行うこと。


E 税源移譲に伴う自治体間の水平的な財政調整を行う必要が生じる場合は、上記「地方財政委員会」(仮称)等における、民主的な協議を前提にすること。

(4) 地方債発行の共同発行が可能となるシステムを
地方債の発行については、公営企業金融公庫の改組などを含め、共同発行が可能となるシステムを構築すること。また、自治体が低利で資金調達を行うことが可能な制度を維持すること。

   2004年5月

 

 ● 「骨太の方針第4弾」

 

 ● 「平成の自由民権運動だ!」 財政危機突破で地方6団体が集会

    


 ● 門真市議会において「地方分権の確立するための真の三位一体改革の実現を求める意見書」が全会一致で採択 

 全国知事会議採択 3.2兆円の補助金削減
「三位一体の改革」 地方自治、暮らし どうなる